最近ではニュースでもよく見かけるようになりましたが、スポーツの現場に水素を取り入れる動きが急速に広がっています。
管理人KONこれだけのトップアスリートが水素を取り入れているとなると、気になるのは「なぜ?」という疑問ですよね。
「水素吸入が運動パフォーマンスを向上させる」と研究から断言することは、現時点ではできません。
ただ、
- 運動中の血流改善
- 疲労感(自覚的運動強度)の軽減
- 血中乳酸の低下
- 運動後の筋肉疲労の回復のサポート
といった方向で、水素との関係を示す研究が国内外に複数あることはわかっています。
今回は「なぜトップアスリートが選ぶのか」を研究から探るべく、論文をもとに整理してみます。
なぜ「水素と運動」の関係が研究されるのか|酸化ストレスと水素の役割
まず、なぜスポーツ科学の分野で水素が注目されているのでしょう?
これは、運動によって生じる「負の側面」を水素がカバーできる可能性が示唆されているからです。
1. 激しい運動は「酸化ストレス」を急増させる
激しい運動をすると、筋肉が大量の酸素を消費する過程で、体内に大量の活性酸素が発生します。
これが一時的に「酸化ストレス」を高める要因となります。
酸化ストレスは、筋肉の疲労・筋肉痛・炎症の主な原因の一つといわれているんですね。
2. 水素が持つ「選択的抗酸化作用」のメリット
ここで期待されているのが、水素(分子状水素・H₂)の「選択的な抗酸化作用」です。
水素には、
悪質な活性酸素(ヒドロキシルラジカルなど)のみを除去する
という作用があり、
「体に必要な活性酸素は残しつつ、細胞にダメージを与える有害な種だけをターゲットにする」
という、他の抗酸化物質とは異なる大きな特徴をもっています。
研究者たちが立てた仮説
以上のことから、研究者たちはこのような仮説をたてたのだと考えられます。
「水素の作用で運動由来の酸化ストレスを抑えれば、パフォーマンス向上やリカバリー促進につながるのではないか?」



この仮説を検証するために、現在、世界中でさまざまな臨床研究が進められているんですね。
研究から見えてきたこと
それでは具体的な研究についてみていきましょう。
① 水素吸入によって「脚部の血流が改善する」可能性
昭和大学スポーツ運動科学研究所が行った研究では、健常成人男性10名に対して、高濃度水素(68%)+酸素(32%)の混合ガスを1時間吸入させ、その後の下肢(脚部)の血流動態を計測しました。※1
その結果、下記の内容が確認されました。
- 膝窩動脈(膝裏の動脈)での血流速度:水素吸入後に有意に向上
- 筋柔軟性・関節可動域・垂直跳び高:有意な変化は見られず
「水素によって血流が改善すると→関節可動域が改善し→運動パフォーマンスが向上するのでは?」という仮説のもとで行われた研究でしたが、この短期的な研究では「血流改善」の部分は確認された一方、その先のパフォーマンス向上までは確認されませんでした。
② 運動後の疲労感が軽減する可能性
次の研究です。
健康な若年男性24名を対象にした研究(2022年)では、水素と酸素の混合ガス(水素濃度4.08%、流量1800ml/分)を20分間吸入させた後に高強度の運動を行ってもらい、疲労の感じ方を測定しました。※3
その結果がこちら。
- RPE(「どれくらい運動がキツく感じられるか」の指標):H₂群で全強度段階において有意に低下
- 心拍数:50〜100%最大ワークロードでH₂群が有意に低値
- 前頭前野の活動(脳):H₂群で高強度段階においても有意に高い水準を維持



「運動がキツく感じられる」度合いが下がったのね。
『「運動がキツく感じられる」度合いが下がった』という点と合わせて注目されるのが、「前頭前野活動の維持」です。
「きつい」という感覚は、体の末梢だけでなく、脳が疲労を判断するプロセス(中枢疲労)にも関わっています。
水素吸入が前頭前野の活動を維持することで、疲労感の認知が抑制された可能性が示唆されています。



「体が楽になる」だけでなく「脳が疲れを感じにくくなる」可能性があるとしたら、スポーツをする人にとっては大きな話だと思います。
ただいずれも小規模な研究なので、今後の検証が必要です。
③ 血中乳酸が低下する可能性
激しい運動後に「脚が重い」「体が動かない」となるとき、その一因が血中の乳酸蓄積です。
597名の参加者を含む27論文29研究を統合したメタ分析(2024年)では、水素補給が乳酸値に与える影響を分析しています。※6
血中乳酸(BLA):SMD = −0.37(p = 0.001)で有意に低下
効果量(SMD)は「小」の水準ですが、統計的には明確な有意差が示されました。



疲労物質の蓄積が軽減される方向性は、複数の研究で繰り返し示唆されています。
④ 筋肉回復をサポートする可能性
チェコのエリートフィンスイマー12名を対象にした研究(2024年)では、水素水を4日間摂取した後に、1日2回の高強度トレーニングを実施し、その後の筋肉回復状況を測定しました。※5
その結果は以下のとおり。
- クレアチンキナーゼ(CK)値:HRW群で有意に低値(156 vs 190 U/L、p = 0.043)
- 筋肉痛(VASスコア):HRW群で有意に低値(34 vs 42 mm、p = 0.045)
- 反動跳躍高:HRW群で有意に改善(p = 0.014)



筋肉痛・CK値(筋ダメージ)・跳躍力のすべてに有意な改善が見られたのね!



そう、つまりアスリートにとっては、「次のハードなトレーニングに万全の状態でのぞめる」というメリットが水素によってもたらされる可能性があります。
※ただしサンプルが12名と小さい点はご留意ください。
⑤ 最大酸素摂取量(VO₂peak)が改善する可能性
国内で行われた研究(9名、J-STAGE掲載)では、自転車エルゴメーターで運動しながら1%の水素ガスを吸入した結果を、プラセボ(空気吸入)と比較しています。※2
その結果・・
- VO₂peak(最大酸素摂取量):水素ガス試行で有意に増加
- 酸化ストレス:運動終了直後に有意に減少
となりました。
VO₂peakは「有酸素能力」の代表的な指標なので、「水素によって、同じ負荷の運動をしても、体や心肺へのダメージを抑えながら、よりスムーズに動けるようになる」といった、コンディショニングを支える働きが期待できるといえるかもしれません。
が、参加者9名と非常に小規模であることと、「運動中に水素ガスを吸い続ける」という条件が現実的な使い方とは大きく異なる点には注意が必要です。
⑥メタ分析が示す全体像(2024年・27論文・597名)
2024年に発表されたシステマティックレビュー&メタ分析では、27論文29研究・597名のデータを統合し、水素補給が身体能力の各指標に与える影響を整理しています。※6
その結果、水素の得意分野と、現時点では期待しすぎないほうがよい分野がはっきりと分かれました。
| 測定項目 | 有意差 | 評価 |
|---|---|---|
| RPE(疲労感) | あり(p = 0.009) | 有意な小効果 |
| 血中乳酸 | あり(p = 0.001) | 有意な小効果 |
| 下肢爆発力 | あり(p = 0.018) | 有意な小効果 |
| VO₂max(有酸素能力) | なし | 有意差なし |
| 有酸素持久力 | なし | 有意差なし |
| 無酸素能力 | なし | 有意差なし |
| 筋力 | なし | 有意差なし |



「疲労感」「乳酸」「下肢爆発力」には有意な効果があるが、「有酸素能力」「筋力」への直接的な向上は確認されない・・・というのが、現時点での全体像といえそうです。
効率を求めるなら「吸入」が有利?
また、この分析で興味深いのは、水素水などの「飲用」よりも、「水素ガスの吸入」のほうが身体能力へのポジティブな影響がより明確に出ているという評価です 。
こうした傾向が、水素吸入という手段がスポーツの現場で多く選ばれている理由の一つと言えるかもしれません。
残る課題
運動と水素の関係については有望な結果が積み上がってきている一方で、まだ解明されていない点も少なくありません。
現状では、以下のような課題があると言えそうです。
- 最適な投与量・方法の標準化:研究ごとに水素の濃度・量・時間が大きく異なります。「どれくらいが最適か」は現時点では確立されていません
- 吸入 vs 飲用の比較が不十分:メタ分析では「吸入が有効」と示唆されていますが、直接比較した研究はまだ少ない状況です
- 長期的な効果は未確認:多くの研究が単回〜2週間程度の短期的な介入のため、継続使用での効果については別途検証が必要です
- 酸化ストレス低下の直接証拠は限定的:研究の仮説の出発点である「酸化ストレス低下」については、抗酸化能の改善は示されている一方、酸化ストレスマーカーそのものへの有意な効果は確認できていないという分析もあります※7



まだまだ研究が必要な点も多いのね。
まとめ
以上、今回は「水素吸入と運動の関係」をテーマに、国内外の複数の研究をまとめてみました。
「水素吸入が運動パフォーマンスを劇的に向上させる」とは言えませんが、
「疲労感の軽減・乳酸の低下・筋肉回復のサポート」という方向での効果が、複数の研究で繰り返し示唆されている
という状況は、研究として積み上がってきています。
「運動そのものの能力を高める」というよりも、
「運動をより快適に続けられる」
「回復をサポートする」
「次のトレーニングのための万全な状態を整える」
というイメージが、現時点では近いかもしれません。
水素吸入器の選び方については、姉妹サイト「スイスピ」で詳しくまとめていますので、こちらも参考にしてみてください。
>>水素吸入器はどう選ぶ?8年使い続けたユーザー視点の「10のポイント」と16機種比較
参照文献
※1 昭和大学スポーツ運動科学研究所:高濃度水素+酸素ガス吸入が下肢血流動態,筋柔軟性,関節可動域,垂直飛び高に与える影響.理学療法学.J-STAGE
※2 水素ガス吸入が運動負荷試験中の酸素摂取量に及ぼす影響.J-STAGE
※3 Luo M. et al. (2022). Effects of pre-exercise H₂ inhalation on physical fatigue and related prefrontal cortex activation during and after high-intensity exercise. Front Physiol. PMC
※4 Ostojic SM. (2020). Short-term H₂ inhalation improves running performance and torso strength in healthy adults. Eur J Sport Sci. PMC
※5 Kozáková R. et al. (2024). Hydrogen-rich water supplementation promotes muscle recovery after two strenuous training sessions performed on the same day in elite fin swimmers. Front Physiol. PMC
※6 Kiyimba T. et al. (2024). Can molecular hydrogen supplementation enhance physical performance in healthy adults? A systematic review and meta-analysis. Front Nutr. PMC
※7 Botek M. et al. (2024). Can molecular hydrogen supplementation reduce exercise-induced oxidative stress in healthy adults? A systematic review and meta-analysis. Front Nutr. Frontiers
※8 SUISO JAPAN Co., Ltd. (2025年12月). Paris Saint-Germain Adopts Japanese Hydrogen Inhalation Device “Suilive”. SUISO JAPAN公式資料(PDF)(メーカー発表)
※9 株式会社SUISO JAPAN (2025年7月23日). サッカー日本代表選手も愛用!日本製の水素吸入器『Suilive』がスポーツ業界で注目の的に. PR Times(メーカー発表)
※10 日刊スポーツ (2021年11月29日). 近本光司選手の水素吸入に関する報道. 日刊スポーツ






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